スーパーファミコンのスーパースコープ

じつのところ、画面を撃って遊ぶゲームの仕組みについて、未だによく知らない。ファミコンの「光線銃」や、プレイステーションの「ガンコン」については、その仕組みをある程度はウェブ上で調べられたが、何故かスーパーファミコンの「スーパースコープ」については情報が足りない。中古で買ったので取扱説明書も無い。そんなわけで「スーパースコープ」の仕組みを独自に探ってみた。べつに分解したわけでもなく、機械の仕組みを知ってるわけでもないので、探れたかどうかもわからないけども。

レシーバーは、ただのリモコン受信機

「スーパースコープ」の上部にある黒くて四角い部分の中には、どうやら赤外線LED(発光ダイオード)らしきものが3つある(以降、送信部と呼ぶ)。その光は目では見えないが、携帯電話などのカメラを使えば、「スーパースコープ」にある各ボタンを押したときに、光っているのを確認できる。FIREボタンやPAUSEボタンを押したときは一瞬光り、CURSORボタンや、スイッチがTURBOのときのFIREボタンでは、押している間はずっと光っている(ただし、じつは点滅しているのかもしれない。携帯電話のカメラでは秒間コマ数が少ないためか、若干の明暗を繰り返しながらずっと光っているように見える)。一方、スーパーファミコンに接続した「レシーバー」は、どうも光を発する様子が無い。

ひとまず「スーパースコープ」のパッケージに同梱されているゲームソフト『スーパースコープ6』で遊んでみた。照準の調整を終えて、遊んでいるときに「スーパースコープ」の送信部を指で覆うと、ボタンを押したことすら認識されない(ボタンを押したときの効果音がしない)。今度は送信部を覆わず、「スーパースコープ」の砲口(赤い輪の部分)を覆った状態でボタンを押してみた。すると、ボタンを押したことにはなっているが(ボタンを押した効果音が聞こえる)、画面の中心に砲口を向けていくら撃っても、画面外へ撃った扱いになる。

また、ゲームを始めた直後に行う照準の調整を終えた後に、それまでテレビの上に置いていた「レシーバー」をテレビから離れたところに置いたり、「スーパースコープ」に近づけたり、縦に立てて置いたりしたが、照準は正確に反映される。どうやら「レシーバー」の位置は、画面のどこを撃ったかを測定するのとは関係が無いようだ。しかし例えば寝そべって照準の調整をした後に、立ったり横に移動して遊ぶと、ほんの微妙だが照準がズレる。どうやら、画面のどこを撃ったかを測定するために欠かせない要素は、「レシーバー」の位置ではなく、テレビ画面と「スーパースコープ」の距離や位置のようだ。

しかし送信部に赤外線LEDが3個もあるのが気になる。テレビなどのリモコンでは1個で充分に役目を果たしている。そこで照準の位置を判定するのに送信部が役立っているのかもしれないと思って、送信部を半分覆って遊んだが、まったく支障なく遊べた。3個もあるのは謎だが、送信部は単純に情報を送るだけのようだ。そうなると、どこを撃ったかの判定には「スーパースコープ」の砲口が非常に重要な役割を果たしている、と考えられる。

ファミコンの「光線銃」やプレイステーションの「ガンコン」では、ゲーム機本体へと接続したケーブルを使って、撃った画面の位置を特定するのに必要な情報や、ボタンを押したことをゲーム機へ送出するようだ。電源もケーブルで供給する。一方「スーパースコープ」は、単3乾電池6本を電源として送信部から情報を送り、スーパーファミコンに接続した「レシーバー」がその情報を受け取っている。送信部と「レシーバー」は、単純にそんじょそこらのリモコンやリモコン受光部と同じ役割を果たすだけだ。要するに「スーパースコープ」は、ボタンを押したついでに、撃った位置の特定に必要な情報も送信する、バズーカ砲の形をしたリモコンというわけだ。

「ガンコン」は画面の位置を時間で測る

さて、問題はこれからだ。「スーパースコープ」の砲口が、いったいゲーム映像の映るテレビ画面をどう読み取り、画面のあちこちへ狙い撃つのをいかにして実現しているのか。砲口の奥を懐中電灯で照らしてみると、ずいぶん深い筒になっているように見える。たぶん一番奥のところにはセンサーが備わっているのだろう。分解すればもっとよくわかるはずだが、特殊なネジで固定されている部分があり、あいにく道具も技術も度胸も無い。ちょっと開けられそうなところだけ開けてみたけど……。ざんねん、わたしのぼうけんは、これでおわってしまった!

気を取り直して、ちょっと画面にいろいろな細工をしてみる。試しにテレビ画面を暗く調整してみると、画面を撃てなくなる。また、白いコピー用紙で画面の中央を覆ってみると、覆った部分には撃ちにくくなる。やはり画面そのものを読み取っているようで、それが読み取りづらくなっては位置がわからなくなるのだろう。しかし画面をパソコンでキャプチャして1コマずつ眺めてみても、特に変わった様子は無い。撃った瞬間に画面を一瞬だけ判定用の画像に切り替える、ファミコンの「光線銃」と方式が違うのは確かだ。

「ガンコン」は、ブラウン管(CRT)テレビの特性を利用して、狙い撃った位置を判定しているらしい。ブラウン管のテレビは、一見するとわからないが、じつは光の点を左から右へ水平に1行ずつ、画面の上から下へ移動させることで、つまり鉛筆で線を水平に順次ひいて紙を塗りつぶすように、1枚の画を描いている。そしてそれが繰り返されることで動画として見える。デジカメや扇風機ごしにテレビの画面をみると黒帯が横に掛かって見えるのは、光の点が線を描いた直後に線がどんどん消えているのを捉えているからだ。残像の残る人間の視覚では捉えられない。むしろ残像があるからヒトには映像として見えるわけだが。

ブラウン管の光の点が画面の左上に現れてから右下へ到着するまでは、ヒトにはわからないほどの短さだが、いちおうの時間は掛かる。「ガンコン」の場合はそれを利用して、光の点が画面の左上に現れてから、つまり画が描かれはじめてから、「ガンコン」で狙った場所に光の点が到着するまでの時間を計る。「ガンコン」が黄色いプラグの映像信号を要するのは、画が描かれはじめるタイミングを正確に把握するためだ。

たとえば狙った場所に光の点が来たのが、描きはじめから60ぶんの1秒後だったとしよう。すると60ぶんの1秒後だという情報と、60ぶんの1秒後に画面のどこを光の点が移動しているかを想定することで、画面のどこを狙ったかが判断できる、というわけだ。だから、点で順次描くのではなく画面全体が一度に描き換わる液晶方式やプラズマ方式のテレビでは使えないし、映像に特殊な処理を施す高機能なテレビでも使えない。

ちょっと解り難いかも知れないので例え話を出す。何者かに目隠しされて連れまわされた後に目隠しは外されたものの置き去りにされて、自分の居る場所が解らない状況に陥ったとする。ところがそこでなんと、見たことのあるオッサンが通りかかった。時計は持っているので、オッサンが通りかかった時刻を確認する。昼の1時だったとしよう。もしそこで、そのオッサンがいつも昼の1時にナンチャラ公園を通る、ということを友達から聞いて知っていれば、自分の居る場所がナンチャラ公園だと解る、というわけだ。おかしな例えだけれども、お解りいただけただろうか……。

「スーパースコープ」と「ガンコン」

『スーパースコープ6』や『ヨッシーのロードハンティング』では、起動するたびに照準を調整する。照準の調整では2回撃つのだが、1回目はどこを撃とうが画面の中心を撃ったことになる。このとき、「スーパースコープ」の照準で画面の中心を狙ったという前提で調整が設定される。そして2回目は、その調整に基づいて判定が行われている。だから、1回目でちゃんと中心を狙って撃てば2回目では狙ったところに撃てるし、1回目でおかしなところを撃てば、2回目では狙いとズレた所を撃ってしまう。「ガンコン」でも、多分そんな感じではなかろうか。

まあ、以上のことをまとめて考えると、「スーパースコープ」も「ガンコン」と同様の方法をとっているのではないかと思う。ただし「ガンコン」のように映像の信号を受け取れない「スーパースコープ」では、狙った位置に光の点が来たタイミングだけを、スーパーファミコンに通知しているのではなかろうか。そしてその通知を受け取ったスーパーファミコンが、自身から映像を出力するタイミングに基づいて「スーパースコープ」で狙った位置を割り出しているのだと思う。さて、どうだろうか。詳しい人のご助言を待ちたい。

参考資料