プログラミング学習・電子工作向けコンピューターキット

この文書では、電子部品を活用したプログラミング学習や電子工作に向く市販の小型コンピューターキットを紹介しています。ここで紹介する小型コンピューターキットは、はんだ付けなどの作業が不要で、家庭用のパソコンが1台あれば簡単に実験を始められることから、プログラミング学習や電子工作の入門機として利用されています。

BBC micro:bit (ビービーシー マイクロビット)

BBC micro:bit

画像はBBC micro:bit公式サイトより引用

イギリスのテレビ局 BBC(英国放送協会)が主体となり子供たちのプログラミング学習用に開発した、オープンソースのマイクロコンピューター。

パソコンなどのウェブブラウザー上で動く無料の開発用ソフトウェア「Microsoft MakeCode」を使って画面上でパズルを組み立てるようにプログラミング(ビジュアル・コーディング)を行い、そのプログラムをUSBで転送して利用する。2015年にイギリスの小学生向けに無償配布され、2017年には日本でも買えるようになった。

ウェブブラウザーで利用できる開発環境が無料なので、開発して画面上で動作確認するだけならボードを買わずに無料で始められる。開発に使用できるコンピューター言語は、JavaScript(ビジュアル・コーディングと同期)、Python。公式の資料は英語のみだが、日本語で書かれた解説書も出始めているので、始めやすい。

比較的安価ながらボードに様々なセンサーがついているため、子供ではなくてもプログラミング学習や趣味の電子工作の入門機として最適だ。プログラミングがとにかく簡単なので、簡易なセンサーや通知ランプとして素人でも実用的な電子工作ができる。しかもボードにはエッジコネクタを備えており、部品の付け足しができる。エッジコネクタは25ピンのうち5ピンの幅が広くなっており穴も空いているので、ミノムシクリップやネジでもつなげられる。

メイン回路32ビット ARM Cortex M0
(16MHz, 16K RAM, Bluetooth Low Energy内蔵)
インターフェイス2個のボタン, 25個のLED(5×5配置), エッジコネクタ(25ピン)
搭載センサー光(LEDを利用), 温度, 加速度, 方位
有線接続microUSB(電源、プログラム書込みに使用)
無線通信Bluetooth Low Energy, micro:bit同士の無線通信
給電方式microUSB, 3v電池コネクタ

Arduino (アルデュイーノ)

Arduino

画像はArduino公式サイトより引用

イタリアで開発された、電子工作向けのオープンソースのマイクロコンピューター。

パソコン上で無料の統合開発環境「Arduino IDE」を使ってArduino専用の開発言語でプログラミングを行い、そのコード(Arduinoでは「スケッチ」と呼ぶ)をUSBでボードに書き込んで利用する。Arduinoのボードには様々な種類があるが、入門機として特に利用されているのが「Arduino Uno」シリーズである。

「micro:bit」が子供の学習向けなのに対して、Arduinoはより本格的な電子工作に使えるボードだ。そのぶん敷居は高いが、2009年から日本でも販売されている人気のキットなので、開発環境や資料、関連書籍が充実している。後述の「Raspberry Pi」(ラズベリーパイ)とよく比較されるが、Arduinoは組込みハードウェアとしての性格が強く、例えば制御用コンピューターや、電子機器同士を接続する変換器として使いやすい。

ボード単体でできることは少ないので、装備されたピンソケットに様々な電子部品をつなげるのが主な使い方になる。電子部品はブレッドボードなどを使えばジャンパワイヤを挿すだけで接続できる。

Arduino Uno R3 仕様

メイン回路Atmel ATmega328P
インターフェイス13個のLED、14ピンのデジタルI/O(うち6ピンはPWM出力)、6ピンのPWMデジタルI/O、6ピンのアナログ入力
有線接続USB-B(電源、プログラム書込みに使用)
給電方式USB-Bコネクタ, 5v電源2.1mmコネクタ

Raspberry Pi (ラズベリーパイ)

Raspberry Pi

画像はRaspberry Pi公式サイトより引用

イギリスのラズベリーパイ財団によって開発された、シングルボードコンピューター。2012年の発売以来「Arduino」と並んで人気のボードだ。microSDに書き込んだARM GNU/Linux OSが動作する超小型パソコンであり、処理は遅いがパソコンとしても使える。Arduinoがハードウェア開発向けである一方、Raspberry Piはソフトウェア開発向けと言える。

製品シリーズや対応パーツが数多く販売されており、関連書籍も多いため、導入のしやすさはArduinoと同等だ。他のキットが開発にパソコンやスマホを利用するのに対して、Raspberry Piはパソコンなので、HDMI対応テレビとUSBキーボード、マウスを接続して、この1台で開発が始められる。現在主に使われるのは「Raspberry Pi 3 Model B」だ。

ボードにカメラ用と画面用の専用端子があり、対応する部品を簡単に接続できる。カメラで撮った画を保存しつつウェブに転送するような使い方が手軽にできる。また40ピンのI/Oヘッダを備えており、ジャンパワイヤで汎用的な電子部品と接続できる。

Raspberry Pi 3 Model B+ 仕様

メイン回路Broadcom BCM2837B0 1.4GHz ARM Cortex-A53, 1GB RAM(LPDDR2)
インターフェイスCSIカメラ端子, 40ピンヘッダ, DSI画面端子, microSDカード差込口
有線接続Gigabit Ethernet, 4つのUSB2.0端子, HDMI出力(映像,音声), 3.5mm4極端子(RCA映像,ステレオ音声)
無線通信802.11b/g/n/ac, Bluetooth v4.2
給電方式microUSB-B(5V 2.5A), 2.54mmピンヘッダ, PoE HAT用ピンヘッダ

obniz (オブナイズ)

obniz

画像はobniz公式サイトより引用

日本の企業CambrianRoboticsが開発し、2018年に発売した新しいボード。公式サイトで購入できる。スマートフォンやパソコンのウェブブラウザー上で利用できる開発環境を使ってJavaScriptでプログラミングし、Wifi(無線LAN)で接続したボードと直接データを送受信して使う。プログラムをボードに書き込むのではなく、インターネット経由(クラウド)で直接制御するタイプのキットだ。

まだ出たばかりの製品なので書籍はないが、公式サイトに日本語の資料が準備されている。開発の経験がない場合には敷居は高いが、ウェブサイトを開発した経験があれば簡単に使い始められる。ボードをWifiでインターネットにつなぎ、有機ELに表示されたQRコードをスマホで読み取るだけで、ボードを直接制御できる開発環境が現れる。インターネット関連の技術だけで利用できるため、IoT(モノのインターネット)を体験するのに最適だ。

白黒128×64画素の有機EL画面が装備されているので、まず何かを表示するだけでも楽しめるが、ボード下部に用意された12ピンに電子部品をつなげて使うのが主な用途になる。この12ピンは自由度が高く、用途をソフトウェアから決められる。

インターフェイス有機EL画面(白黒128×64画素), ジョグスイッチ(左右選択,決定), 12ピンのGPIO
有線接続microUSB(電源用)
無線通信802.11b/g/n, Bluetooth v4.2 BR/EDR BLE
給電方式microUSB