「64DD」(ロクヨンディーディー)とは、「ファミコン」や「ニンテンドーDS」などで知られる玩具メーカーの任天堂から生み出された、家庭用ゲーム機「NINTENDO64」(ニンテンドウ ロクジュウヨン)に取り付けて使う磁気ディスクドライブである。当時のゲーム機としては大容量に書き換えられる専用ディスクを使い、時計機能も内蔵している。任天堂は、専用カセットを使うNINTENDO64に64DDを併用することで、遊び方によって大きく内容が変わったりカセットのゲームにディスクの内容を加えたりする、画期的なゲームソフトを安く提供しようとしていた。
任天堂は当初、1996年にNINTENDO64を発売して間もなく64DDを発売する予定であった。しかしNINTENDO64自体の売行きが悪く64DD向けのゲームソフトも揃わないため、64DDの発売は何度も延期された。そのうちにカセットの容量はディスクの半分ほどに増え、ディスク向けに開発されていたゲームソフトがカセットで発売されるなど、64DDの存在意義は薄れていった。1999年5月には次世代ゲーム機「ニンテンドーゲームキューブ」の開発が発表され、NINTENDO64自体の商品寿命が終わるのを窺わせた。
1999年6月、任天堂とリクルートは64DDを使った会員制の通信サービスを運営する合弁会社「ランドネットDD」を設けた。同年11月には会員を10万人限定で募り、会員に64DD一式を届けた。そして予定から2ヶ月遅れの翌年2月にサービスを開始した。しかし会員費の支払方法が初めはクレジットカードしかなく、また回線の接続先が少なく通信費が割高になるなど問題点が多かった。その結果、会員は僅か1万5千人しか集まらず、サービスは1年で終りを迎えた。それと共に64DDは商品としての役割を終えた。
64DDはゲーム業界の表舞台に立つことなく果てたが、64DD向けに考えられていた数々のアイデアや64DD向けのソフトに含まれていた内容は、後になって実を結んでいる。それらは、『どうぶつの森』や『メイド イン ワリオ』といったゲームソフト、そしてWiiの特徴である『似顔絵チャンネル』などだ。ゲームのアイデアを生み出すことに一役買ったとすれば、64DDの存在は決して無駄ではなかったはずである。